最近、SNS「Threads」で「今後のECオンライン運営はプラットフォームを活用すべきであり、オウンドメディアに固執すべきではない」という発言が話題になり、多くのマーケティング関係者の間で議論が巻き起こりました。
この意見に対して、「公式サイトこそがブランド資産であり、ブランド主権の象徴である」と反論する声も多く見かけます。しかし、私にとってはむしろ、この発言こそが多くのブランド経営における長年の盲点を正確に突いていると感じています。
なぜなら、消費者の実際の購買行動に目を向ければ、「オウンドメディア」は思っているほど重視されていないという事実が見えてくるからです。
この記事では、データ分析・実例・マーケティング戦略を通して、私が「オウンドメディア至上主義から脱却すべき」と考える理由と、今本当に取り組むべき全チャネル混合経営について、解説していきます。
消費者はオウンドメディアを好まない──すでにデータが物語っている
これは私個人の憶測ではありません。データがすでにその事実を示しています。
Googleが2021年に発表した「スマート消費者に関する重要報告書」(台灣)によると、過去3ヶ月間に消費者が日用消費財を購入したチャネルのうち、
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実店舗:71%
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オンラインショッピング:67%
さらに、オンラインショッピング内訳を見ると、
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ブランド公式サイト(オウンドメディア):14%
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ブランド公式アプリ:9%
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その他:第三者ECサイト、実店舗運営のECサイト、デリバリープラットフォームなど
つまり、多くの消費者は価格・利便性・プロモーションを重視し、ブランド公式サイトは購買の主戦場になっていないのです。
多くのブランド担当者が「オウンドメディアはブランド資産だ」と主張します。それ自体は間違っていません。
しかし、その「資産」だけに固執し、消費者が実際に購入しているチャネルの現実を無視することこそ、戦略として危ういのです。
「オウンドメディア至上主義からの脱却」は、放棄ではなく“偏り”をやめようという話
ここで強調したいのは、「オウンドメディアをやめろ」という話ではないということです。
むしろ、「オウンドメディアにこだわりすぎて、他のチャネルの購買力を無視するな」という警告です。
ブランド経営において重要なのは、「どこで売るか」ではなく、 その製品が、どのチャネルでどんな舞台を持てるか という視点。
つまり、これから必要なのは全チャネル混合経営です。
【実例】ゼロから立ち上げたブランドがチャネルを活用して市場認知度を得た方法
具体例として、私たちが最近実際に取り組んだ新規ブランドの事例を紹介します。
このブランドは、全くの新規立ち上げ。
名簿も、過去のデータも、ブランド認知度もゼロの状態でした。
そこで私たちは、初期段階からオウンドメディアとチャネルの並行戦略を採用。
特に、零食商品については、クライアントにこう提案しました。
「まずは300個、私たちに任せてください。蝦皮(Shopee)のタイムセールで販売しましょう。」
当然ながら、この施策は利益目的ではありません。
実際、1個あたり約30元の赤字で、手数料・物流費・プラットフォーム手数料を含めて9,000元の損になる計算でした。
しかし、私たちはこれを**「損失」ではなく「マーケティング投資」**と位置付けました。
なぜなら、狙っていたのは300個の利益ではなく、ブランド認知度だったからです。
即完売が、ブランドポジショニングを作った
タイムセール当日、300個は最後の1時間で完売。
平均すると1分間に5個売れるペース。
その瞬間、この商品には**「1分間に5個売れる人気零食」という市場ラベル**が生まれました。
このスピード感と話題性は、公式サイトで広告を出しても再現できなかったでしょう。
なぜなら、プラットフォームの持つ流量と仕組みがあったからこそ実現できた現象だからです。
チャネルごとに売れる商品は違う──だから「混合経営」が必要
さらに興味深いことに、このブランドはその後momoモールにも出店しました。
すると、オウンドメディア・蝦皮・momoで、それぞれ売れ筋商品がまったく違うという現象が起きました。
これは偶然ではありません。
過去、チャネルの購買名簿を取得できた時代に、 私は公式サイト・蝦皮・momoの名簿をFacebookにアップロードし、オーディエンス重複分析を行ったことがあります。
結果は、重複率5%未満。
つまり、オウンドメディアとチャネルの顧客は、元々別の人たちなのです。
オウンドメディアだけに固執することは、多くの消費者を見捨てているのと同じなのです。
チャネル経営に関する3つの誤解を打破する
多くのブランド担当者は、チャネル活用について抵抗を感じています。
よく耳にするのは次の3つの誤解です。
1. チャネルは手数料が高すぎる
確かにチャネルでは手数料が発生します。
しかし、それは価格戦略が最初から間違っているだけ。
手数料は、オウンドメディアなら広告費として支払っているもの。
価格設計に組み込んでいないこと自体が問題です。
2. チャネルでは「私域経営」ができない
これは手段の問題です。
実際には、消費者データを取得する仕組みを設計すれば、チャネルでも関係性を築くことはできます。
問題はチャネルにあるのではなく、自社の運用設計にあるのです。
3. オウンドメディアこそが長期資産、チャネルは短期ビジネス
これも典型的な誤解です。
CRMや名簿経営は、そもそも一定の取引量がないと成立しません。
公式サイトの売上が微々たるものなのに、「名簿資産」にこだわっても、実際には経営インパクトは生まれません。
私がよくBtoC業界の受講生に伝えるのは、
「毎月1,000件の購買リストを創出できるようになって初めて、CRMが意味を持つ」
ということです。
【まとめ】本当に取り組むべきは「全チャネル混合経営」
「オウンドメディア至上主義からの脱却」という言葉の本当の意味は、オウンドメディアを捨てろ、ということではありません。
消費者がどこにいるかを正しく理解し、そこに自社の販売戦略を展開すること。
これこそが、今の時代に必要な経営戦略です。
ブランド公式サイトは資産、チャネルプラットフォームは認知度と取引。
そして、これらを組み合わせてこそ、ブランド経営の本当の競争力が生まれます。
私がこの数年、一貫してブランド戦略で守ってきた原則はこれです。
消費者が出没する場所こそ、あなたの主戦場です。
もし、あなたが 「チャネル経営の具体策」や「プラットフォーム価格設計戦略」についてさらに知りたい場合、ぜひコメント欄で教えてください。改めて記事で深掘りしようと思います。
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